2016年、ノーベル医学・生理学賞は、大隅良典氏(東京工業大学 栄誉教授)が受賞されました。
大隅先生、おめでとうございます!!
大隅氏の業績である、オートファジーの研究とは、どういうものなのでしょうか。本記事で、子供さんにも分かるように簡単に説明したいと思います。
では参りましょう。
オートファジーとは、細胞内のお掃除屋さん
オートファジーとは、モノではなく、仕組み・機能の名前です。自食作用(じしょくさよう)とも呼ばれます。この機能により、細胞内の不要なタンパク質が分解されます。つまりオートファジーとは、細胞内のお掃除屋さんのようなものです。
さらに、オートファジーは不要なタンパク質を分解するだけではなく、これを再利用して新しいタンパク質を作ります。つまり、タンパク質のリサイクルが行われているのです。
その仕組みでは、細胞内で袋状のものが現れて不要なタンパク質を囲い込み、一気に分解します。不用品をガバッと袋に詰めて、まとめて処分するイメージです。なんか豪快ですね(^^)
この仕組みにより、人体内では毎日200gのタンパク質が新しく作られているそうです。

個人的に不思議に思ったのは、この『不要な物質を囲い込む袋状のもの』がどうやって現れるのか、何がシグナルになっているのか、ということです。
以前、NHKの『サイエンスZERO』という番組で、オートファジーを特集していました(ゲストに大隅氏も登場)。当時の映像では、袋状のものが突然細胞内に湧いて出て来る、そんな感じでした。
番組内でも袋が出現する仕組みが話題になりましたが、何がトリガーになっているのかなど、袋が湧いて出る仕組みはまだ分かっていない、という話だったと記憶しています。
以上、超簡単なオートファジーの説明でした。
参考:科学コミュニケーターブログ
ではこのオートファジーの研究において、大隅先生はどのように貢献されたのでしょうか。
大隅先生の貢献
1990年台、動物の細胞の中でタンパク質が分解されることは分かっていましたが、どうやってそれが起きているのか、その仕組みは全く分かっていませんでした。
細胞内でどのようにタンパク質が分解されているのか、その現象を目で観察できるようになれば、研究を進める上で極めて有効です。
そこで大隅先生は、酵母の細胞内でタンパク質が分解される様子を、電子顕微鏡で観察することを試み、これに成功しました。
そして、5000株もの酵母を片っ端から観察しまくり、オートファジーに関係する遺伝子apg1を発見しました。これは大変に泥臭い作業です。まさに『努力と根性』が必要とされます。この作業をコツコツと積み重ねることにより、apg1という遺伝子にたどり着いたのです。努力と根性こそが、偉大な発見をもたらしたのです。
その後も努力と根性は続けられ、大隅先生は、オートファジーに関係する15種類のも遺伝子を発見しました。これらの成果を元に、世界中で様々な研究が進められているとのことです。
これらの業績が評価され、大隅先生に2016年ノーベル医学・生理学賞が授与されました。
ところで、オートファジーの研究は、私達の生活にどんな影響を与えるのでしょうか。この点について見てみましょう。
オートファジー研究の応用
オートファジーの研究を通して、新薬の開発が期待されています。
パーキンソン病やアルツハイマー病は、脳内に不要なタンパク質が溜まることが原因とも言われています。オートファジーの活用により、これらタンパク質を一掃できれば、治療できるかもしれません。
またオートファジーにより細胞を新鮮に保つことにより、がんの予防に役立つかもと考えられていますし、脂肪肝とも関係していると言われています。
これら病気とオートファジーとの関わりが明らかになれば、治療の戦略が立てられ、薬を開発できるようになります。
実際に新薬が完成するまでには長い時間がかかりますが、今後のオートファジー研究で、開発がスピードアップするかもしれません。期待しましょう。
大隅良典先生 略歴(とヒゲの理由)
- 生年、出身地: 1945年、福岡県
- 経歴:
東京大学教養学部卒
ロックフェラー大学 ~ 基礎生物学研究所
などを経て
東京工業大学 栄誉教授 - ヒゲの理由:
大隅先生のトレードマークでもある、あの立派なおヒゲ。
ロックフェラー大学へ留学する際、童顔に見られるのを気にして、留学前にヒゲを伸ばしたとのことです。
先生、童顔でも可愛いのに(^^)
まとめ
大隅良典先生が2016年のノーベル医学・生理学賞を受賞されました。その研究対象である、オートファジーについて、子供にも分かるように、簡単に解説しました。
オートファジーって、細胞内の不要なタンパク質を分解してくれる、細胞の中のお掃除屋さんなのですね。
私達の細胞が、いつもゴミがなく新鮮でいられるのは、オートファジーのお陰なのです。
これからオートファジーを使って新薬開発が期待されています。パーキンソン病、アルツハイマー病、脂肪肝など、いろんな病気がオートファジーと関係していると考えられています。
特効薬が早くできるといいですね!
今後の研究成果にも期待しましょう。