秋になりました。
秋といえば紅葉ですが、ノーベル賞の季節でもあります(^^)
ここ数年、日本からは毎年のようにノーベル賞受賞者が出ています。日本人として、とてもうれしく思います。
今年2017年はどうでしょうか。日本から受賞者がでるでしょうか。物理学賞、医学・生理学賞、化学賞の3分野にては、顕著な業績をあげておられる研究者が多数おられます。気になりますね!
ということで、2017年の日本人ノーベル賞候補を予想してみました。
当たるも八卦、当たらぬも八卦?
にわか科学ファンの予想はどうなりますか(^^;
目次
予想の方法・根拠は?
『クラリベイト社』という会社があり、『引用栄誉賞』という発表をしています。
『トムソン・ロイター』というサイトがあり、ここで毎年『引用栄誉賞』という発表をしています。
2017年からは、トムソン・ロイター社から独立したクラリベイト社が発表します。
これは、誰の論文がたくさん引用されたかのランキングの上位0.1%の中から、ノーベル賞にふさわしい研究者を選び出したものです。
実際にこの引用栄誉賞の受賞者から、多数のノーベル賞受賞者(率にして15%)が出ています。
2016年ノーベル生理学・医学賞の東京工業大学・大隅良典先生も、引用栄誉賞を受賞されていました。
2002年以降、日本人で引用栄誉賞を受賞している人は24人おり、そこから既ノーベル賞受賞者や故人を除いたリストを作りました。
日本人ノーベル賞候補者の予想リスト
以下が予想したノーベル賞候補者のリストです。
業績については、書くのが難しかったのですが、できるだけ簡単に、私達の生活との関連がイメージしやすいように書いてみました。
医学・生理学賞
小川 誠二(おがわ・せいじ)
- 分野: 医学・生理学
- 現職: 東北福祉大学特任教授
- 業績:
病院で診断に使われるMRI装置の基本原理を発見しました。私達の医療・健康に貢献しています。
竹市 雅俊(たけいち・まさとし)
- 分野: 医学・生理学
- 現職: 理化学研究所多細胞システム形成研究センター特別顧問、その他
- 業績:
私達の体は無数の細胞がくっついて形作られています。細胞同士をくっつける物質『カドヘリン』を発見したのが、竹市先生です。
水島 昇(みずしま・のぼる)
- 分野: 医学・生理学
- 現職: 東京大学大学院医学系研究科教授
- 業績:
世界で初めて、生きている細胞内でオートファジー現象を可視化しました。先に紹介した大隅氏に師事されました。
森 和俊(もり・かずとし)
- 分野: 医学・生理学
- 現職: 京都大学大学院理学研究科教授
- 業績:
『小胞体ストレス応答』と呼ばれる仕組みを解明しました。これは、細胞内に異常なたんぱく質が溜まるのを防ぐ仕組みで、私達の健康に関係しています。
ノーベル賞の登竜門と言われる米国・ラスカー賞も、2014年に受賞されました。
坂口 志文(さかぐち・しもん)
- 分野: 医学・生理学
- 現職: 大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授
- 業績:
過剰な免疫反応を抑える『制御性T細胞』という細胞を発見しました。ガン細胞は制御性T細胞を利用していることが多いので、ガンの新しい治療方法につながるかもしれません。
本庶佑(ほんじょう・たすく)
- 分野: 医学・生理学
- 現職: 京都大客員教授
- 業績:
免疫の働きを抑えるタンパク質『PD-1』を発見しました。
既にPD-1に働きかける新薬『オプジーボ』が開発され、承認されています。
物理学賞
十倉 好紀(とくら・よしのり)
- 分野: 物理学
- 現職: 理化学研究所 創発物性科学研究センター センター長
- 業績:
新しいマルチフェロイック物質を発見しました。より高性能な電子部品の開発に貢献します。
マルチフェロイック物質とは、強磁性、強誘電性などを同時に複数有する物質です。電気的に磁気的性質を操作するなど、これまでになかった特性を持っています。
中沢 正隆(なかざわ・まさたか)
- 分野: 物理学
- 現職: 東北大学 電気通信研究所長
- 業績:
世界中の高速光ファイバー通信網を支える、エルビウム添加ファイバー増幅器を開発しました。インターネットを陰で支える技術ですね。
飯島 澄男(いいじま・すみお)
- 分野: 物理学
- 現職: 名古屋大学特別招聘教授、その他
- 業績:
次世代の構造材料として有望な、カーボンナノチューブを発見しました。鉄より軽く、鉄より強い材料は、さまざまな場面で使われます。
氏はノーベル賞候補の常連で、数え切れないほど多くの著名な賞を受賞されています。ノーベル賞も、いつ受賞されてもおかしくない研究者です。
大野 英男(おおの・ひでお)
- 分野: 物理学
- 現職: 東北大学電気通信研究所 教授
- 業績:
『磁石の性質を持つ半導体』を開発しました。スマホ等に使われる電子部品の性能向上に貢献があったのだろうと思います。
細野 秀雄(ほその・ひでお)
- 分野: 物理学
- 現職: 九州大学高等研究院 特別主幹教授、その他
- 業績:
鉄は超電導にならないという『常識』を覆し、鉄系超電導物質を発見しました。超電導技術においては、リニアモーターカーの実用化に多大な貢献がありました。
また、液晶画面のIGZOの開発でも大きな成果があったことが有名です。
化学賞
新海 征治(しんかい・せいじ)
- 分野: 化学
- 現職: 九州大学高等研究院特別主幹教授、その他
- 業績:
分子レベルの『機械』のパイオニア。ナノスケールだそうです。
北川 進(きたがわ・すすむ)
- 分野: 化学
- 現職: 京都大学大学院工学研究科教授
- 業績:
地球温暖化を進める二酸化炭素を効率よく吸着する『多孔性金属錯体』の合成方法を発見しました。
藤嶋 昭(ふじしま・あきら)
- 分野: 化学
- 現職: 東京理科大学学長
- 業績:
酸化チタン光触媒は医療機器の衛生面の向上、鏡の曇りどめなど、社会で幅広く使われています。
春田 正毅(はるた・まさたけ)
- 分野: 化学
- 現職: 首都大学東京教授、その他
- 業績:
金は触媒に使えないという『常識』を覆し、新たな触媒の世界を切り開きました。
前田浩(まえだ・ひろし)
- 分野: 化学
- 現職: 崇城大学DDS研究所/熊本大名誉教授
- 業績:
ガンの組織の血管では壁に多くの隙間ができて、血液に含まれる成分が、組織の中に入りやすいことに気づきました。
これより、腫瘍には高分子薬物が蓄積しやすいことを発見しました(EPR効果)。
この性質を利用したのが、ガンの組織にピンポイントで薬を送り届ける『ドラッグデリバリー』という治療法です。
従来の治療法より副作用を減らせる治療法として、医療に大きな進歩をもたらしつつあります。
松村保広(まつむら・やすひろ)
- 分野: 化学
- 現職: 国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野長
- 業績:
上記の前田先生と共に、EPR効果を発見しました。
経済学賞
清滝 信宏(きよたき・のぶひろ)
- 分野: 経済学
- 現職: プリンストン大学経済学部教授
- 業績:
住宅などの資産価値の下落という小さな出来事が経済活動全体に及ぼす影響を、わずか3つの数式を使って表現しました(清滝-ムーアモデル)。日本政府にも経済政策上の助言を行っています。
日本人による、世界の常識を覆した研究がいくつもあるんですね。
誰がノーベル賞を受賞しても不思議ではありません。
すごいことです。
2017年、新たに引用栄誉賞に追加された日本人
クラリベイト社から、2017年の『引用栄誉賞』が発表されました。
その中に日本人が1名いらっしゃいますので紹介します。
桐蔭横浜大学 医用工学部 特任教授の宮坂力(みやさか・つとむ)氏です。
宮坂先生の功績は
『効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用』です。
ペロブスカイト材料とは、次世代太陽電池の材料として期待されているもので、印刷的な処理で太陽電池が作成できるそうです。
曲げられる太陽電池、衣服そのものが太陽電池、なんて応用ができそうですね。人工衛星の太陽電池も、帆船の帆のようにできるかもしれません。
関連する論文はこちら:
Perovskite Solar Cells
引用栄誉賞以外の日本人候補
トムソン・ロイターの引用栄誉賞は受賞していないけれども、有力な受賞候補者を追加しておきます。
このお二人は、リチウムイオン電池の発明者として有名です。
吉野彰(よしの・あきら)
- 分野: 物理学
- 現職: 旭化成フェロー
- 業績:
1985年ころ、リチウムイオン二次電池の基本概念を確立。1991年にリチウムイオン二次電池を実用化しました。
水島公一(みずしま・こういち)
- 分野: 物理学
- 現職: 東芝リサーチ・コンサルティング シニアフェロー
- 業績:
リチウムイオン二次電池の陽極材料である、コバルト酸リチウム等を発見しました。
二次電池とは、充電可能な電池のことです。リチウムイオン二次電池は、今や私達の生活の必需品です。携帯ゲームややスマホなどは、すべてリチウムイオン二次電池を使っています。電気自動車やハイブリッド車にもリチウムイオン二次電池が使われています。
リチウムイオン二次電池がなければ、私たちは相変わらずショルダーバッグ並の巨大な携帯電話を使っていたことでしょう。
リチウムイオン二次電池の発明は、世界中の人々に極めて大きな恩恵をもたらしました。まさにノーベル賞の受賞にふさわしい発明です。
ところで、最近当管理人がとても気になっているのが、『人工知能(AI)』の発明者です。人工知能の発明者はノーベル賞を受賞しないのでしょうか。
ノーベル賞と人工知能(AI)
2016年、人工知能が囲碁のプロ棋士に勝利しました。そして将棋においても、2017年電王戦にてプロのトップ棋士をAIが破りました。
自分で勝ち方を学習していくという、人工知能。囲碁でも将棋でも、今後人間が勝つことは極めて難しくなりました。
実社会においても、ガン患者の難しい診断に成功したり、企業の問い合わせ窓口の自動化に使われたりと、AIはどんどん実用化が進んでいます。
今後も多くの分野で人工知能は人間の能力を超えていくでしょう。その結果がハッピーになるのかアンハッピーになるのかは分かりませんが・・・
この人工知能の基礎を築いたのは、マービン・ミンスキーという米国の認知科学者ですが、残念ながら2016年1月に逝去されました。その後人工知能の発展に最も寄与したのが誰なのか、私にはわかりませんが、人工知能が私達の社会に大きなインパクトを与えるのは確実です。
近い将来、人工知能系の科学者もノーベル賞を受賞することでしょう。
もしかすると、高度に発達した人工知能それ自体が受賞するかもしれませんね。「人工知能○○は、卓越した知見により人間社会の発展に大きな貢献をした云々・・・」とかなんとか。
将来が楽しみです。
村上春樹氏は文学賞を受賞できるか
ノーベル賞と言えば、村上春樹氏を忘れてはなりませんね。今年こそは文学賞を取れる!と言われ続けて幾年月・・・英国のブックメーカー『ラッドブロークス』における、2016年のノーベル文学賞候補は、村上氏が一番人気(5倍)でした。
ノーベル賞発表前夜になると、ハルキニストと呼ばれるファンの有志が集まって語り明かす、なんてイベントが、毎年のように催されています。
果たして、今年はどうなるでしょうか。
こんな本も出てました。このテーマだけで本が一冊書けるなんて、スゴイです。
↓
村上春樹はノーベル賞をとれるのか? (光文社新書)(Amazon)
村上春樹はノーベル賞をとれるのか? (Rakuten)
ノーベル賞の発表はいつ?
2016年のノーベル賞の発表スケジュールは、次のとおりです(時間は2016年実績)。
・10月2日18:30頃 医学・生理学賞
・10月3日18:45頃 物理学賞
・10月4日18:45頃 化学賞
・10月6日18:00頃 平和賞
・10月9日18:45頃 経済学賞
・文学賞は後日
NHK7時のニュースにちょうど良い発表時刻ですね(^^)
なお、授賞式は12月10日(アルフレッド・ノーベルの命日)です。
今年は誰が受賞するのか、楽しみに待ちましょう。
ニコニコ生放送での解説番組
『ノーベル賞発表の瞬間をみんなで迎えよう@日本科学未来館』と題しまして、日本科学未来館のコミュニケーターによる解説番組がニコニコ生放送で行われます。
放送日時は次の通りです。
- 生理学・医学賞
2017年10月2日17:00~19:00
→ ニコニコ生放送 - 物理学賞
2017年10月3日17:00~19:00
→ ニコニコ生放送 - 化学賞
2017年10月4日17:00~19:00
→ ニコニコ生放送 - 誰でもわかる 今年のノーベル賞 ~生理学・医学 物理学 化学賞~
ノーベル賞の発表からちょっと日をおいて、落ち着いたところで改めて今回の受賞を解説しましょう、という番組です。
2017年10月20日19:30~21:30
→ ニコニコ生放送
おまけ:ノーベル賞に『数学賞』が無いのはなぜ
ノーベル賞には『数学賞』がありません。物理学賞はあるのに、不思議ですね。なぜ数学賞は無いのでしょうか?
くわしくはこちら!
→ ノーベル賞に数学賞がない理由!男性なら納得する?
まとめ
2016年の日本人ノーベル賞候補を予想してみました。
日本には世の中を良くする研究をなさっている方が大勢いらっしゃることに、改めて気付きました。
先生方の研究が成就するだけでなく、ノーベル賞という栄誉が与えられんことを、願っています!
ノーベル賞の発表が楽しみです。
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